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現場軽視 [社会]

宅配便の配送が先月滞った件に関して、日本郵便が原因や対策をまとめた報告書を総務省に提出したのだそうです。

  • ペリカン便との統合で従業員と施設も継承するため「特に大きな問題は発生しない」と考えた本社などの認識が甘かった
  • 日本通運から引き継いだ、あて先別に仕分ける機器の使用の訓練が不足していた
  • トラブル時の手作業を想定した人やスペースが足りなかった
  • 中元期に増える冷凍荷物のために借りた保管庫が狭かった
  • 混乱の中で各支店の状況が正確に本社に伝わらず、対応に遅れが生じた

という事柄が主な原因として報告書に記載されているらしい。

つまり、作業現場の事情を十分くみ取ることなく管理者の机の上だけで移行計画を作成し、実際の作業について現場とのすりあわせを行わないまま実施しようとしたために、起こるべくして起こった混乱といえるのではないでしょうか。

小泉政権による郵政改革の結果、郵便サービスがたいへん向上したなんてことを言う経済評論家もいるようですが、実際にはどうなんでしょう?
ほとんどの郵便局の郵便窓口を担当している人は、正社員ではないと思われる人が占めるようになって入れ替わりも頻繁なようです。
ハガキ1枚を売ってもらうに際にも、椅子から立ち上がって深々と頭を下げてくれるようにはなったけれども、あまり利用の多くないであろう取り扱いを頼むと対応が心許なく思える事もあります。
小包を郵便局に持参して出そうとしたら「重量が10g超過しているので受け付けられません」と返された、という投書を新聞で読んだおぼえもあります。
わずかの重量であれば包装材を工夫して軽くするのは容易いはずで、杓子定規に突き返すだけでなくそのような助言も含めた会話があってこそ利用者に役立つ窓口サービスであるのは言うまでもないことだと思います。
窓口に限らず、街中のポストから郵便物を集めている人や家に書留を配達してくれる人などの様子が、以前とは明らかに違ってきています。

営業成績の数字を評価軸にして、労働をコストとみなし「命じた事を安価にこなす手法が優れている」と考えるならば、今の方向性は間違っていないのでしょう。
でも、それだけで本当によいのでしょうか?

現場は与えられた作業だけを安上がりに済ませていればよいのだという考え方が蔓延しています。
ぼくの住んでいる街では市営バスが走っていますが、車両には『市営』と書かれているけれども車内の名札を見ると運転手さんの多くは民間企業の人です。
派遣労働者層の増大は、新聞等で報じられているとおりです。
現場と管理者の距離が拡大しています。

「事件は会議室で起こっているんじゃない!」というセリフが有名になった刑事ドラマがありましたが、わが国のあちこちでそう言いたくなるような事態が生じているのではないかと心配になります。
そして、現場からそんな声が上がるルートすら閉ざされた中で起こったのが、今回のゆうパックの混乱だったのではないでしょうか。

かつては職場の中でひとりひとりが経験を積みスキルを磨く事が重視されていました。
実際の作業の細部を作業者が自ら見直して職場全体の機能を向上させる事が、『カイゼン』という言葉とともに海外から注目された事もありました。
このような方向性が、あまりにも軽視されているように思えてなりません。


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