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商店街と郊外型ショッピングセンター [外から見た日本]

昔から街の中心をなしてきた商店街の不振が問題視されています。特に地方都市ではその傾向が顕著です。
ぼくも日本ではかなり田舎の方に長く暮らしていましたから、にぎわうショッピングセンターと人影のない商店街の対照的な様子を目の当たりにしてきました。

行政も動員して、商店街の中に駐車場ビルを建てたり、舗道を小綺麗に改装したりといった対策が方々で計画されたり実行されたりしています。

それぞれの地域で商売することが大好きで、引き続いて営業したいと真に願っている人たちを応援したいという気持ちはあります。しかし自分の体験から、ぼくはそのような小手先の対策には批判的な考えを持っています。
実際に体験した事例を3つほど挙げてみます。

事例1
電器店で家電製品を選び支払いを済ませて配達を依頼しました。約束した日時に在宅して配達を待つのですが、1時間過ぎても2時間過ぎても誰もやって来ません。その日の夜になって電話が鳴り「今日行けなかったのだけど次にはいつ行ったら良いか」と当たり前のように話してきます。
「ちょっと待て。なぜ今日来なかったのか?」と訊くと、「イヤー、ちょっと忙しくて」
「電話一本も出来なかったのか?」と言うとだんまりです。4~5万円の買い物でしたが、その程度ではたいした利益にもならないので、誠実な対応を期待してはいけなかったのかもしれません。
同じ街にある大手家電量販店の看板を掲げた店で配達を依頼した時には、約束の時間の少し前に配送担当者から、「これから伺ってもいいですか。いま~(地名)にいるので、10分ほど後に到着します」と電話が入り、その通りに配達をしてくれました。
その後、電球1個、電池1本でも必要になった時に、ぼくの足がどちらの店に向いたのかは言うまでもありません。

事例2
商店街の中にある理髪店で散髪をしてもらっていました。その途中で近所の商店主がやってきて理髪店主とともに役所に陳情する商店街振興策の相談が始まりました。ぼくの頭は中途半端なまま放り出して…。
なぜ「今、客扱い中だから15分待ってくれ」とならないのか。
何度か通った床屋でしたが、再びその店に行くことはありませんでした。

事例3
ある街に引っ越していった時、プロパンガスを使い始めるための点検をしてもらいました。担当は近くの金物店でした。台所の構造の違いからそれまで使っていたガス器具を取り付けるには、新たな部品が必要だと判明しました。金物店の人が言うには「その部品ならホームセンターで売っているよ」とのこと。
すぐに入手できる提案なので、ある意味親切ではありますが、「少し待ってくれればうちで取り寄せて持ってくるよ」という提案もあり得るのではないか。
自ら客を他の店に誘導しつつ、「大型店に客を奪われて困る」と主張されても説得力に欠けます。

今ぼくが暮らしているチュニスにも、広い駐車場を備えた大きなショッピングセンターが郊外にいくつかあって人を集めています。しかし、街中の商店街もけっこうにぎわっています。
いずれは日本と同じような傾向が顕在化するのかもしれませんが、ぼくはこの商店街が急速に寂れるとは感じていません。
なぜそう思うのか? この説明にも実例を挙げてみます。

事例4
海水パンツを手に入れようとスポーツ用品店に入りました。店頭に並んでいるものの中から、値段とデザインを見比べてひとつを選び出しましたが、それは特大サイズの品物でした。店主がぼくの体型をじろりと見て「Mサイズだなあ、すこし待って」と言ってひとりの店員とともに店の奥に向かいます。少しして店主が出てきてどこかへ電話をかけます。電話が終わった店主から指示を受けた別の店員が店を飛び出していきました。さらに少ししてから店の奥を探っていた店員が手ぶらで出てきます。そして店主が言うには「うちの店にはMサイズの在庫が無かった。しかし、近くの兄弟店にはあるので店員が今取りに向かっている。ここに座ってもう少し待っていてほしい。」
1,000円程度の買い物をするのにコーヒーでも出てきそうな勢いです。
「いやいや、他の物を見ているから」と座らずに店内をうろうろしているうちに、汗だくになった店員が帰ってきて、ぼくは希望の品物を購入することが出来ました(「少し負からない?」と言おうと思っていたのですが、汗だくの店員の顔を見て値札通りの金額を支払うことにしました)。

事例5
リュックサックが欲しいと思って鞄屋に行きました。いくつもぶら下がっているうちのひとつを見せて欲しいと頼むと、商品を手に取っての説明が始まります。
「この大きな区画には大きな物をたくさん収容できる。あっちにもこっちにもポケットがあって、小さな物もそれぞれに分けて入れることが出来る。(別の品物を指さして)少し安いリュックもあるけれども、こっちの方が品質は断然良い。」と熱心に語ります。
値段を聞いて「少し負からない?」と言うと、やや考えてから15%ほど値引いたきりの良い数字にしてくれました。

こちらの商店では、「この客との売り買いを是非とも成立させよう」という店側の熱意と努力がはっきりと感じられて、こちら側の希望を探ってそれに最大限応えようとしてくれます。
買い物をして店を出た後に「真摯に対応してもらえた」という満足感があって、買い物が楽しく感じられることが多いのです。

日本の商店全てが客をぞんざいに扱うと言うつもりは毛頭ありませんし、中には熱心な商店主がいることも覚えています。
でも、先代、先々代から何となく既定路線として店を受け継ぎ、売り上げが振るわない結果として商売への熱意も薄らぐという悪循環に陥っている例もかなりあるのではないでしょうか。

駐車場を作って、通りを小綺麗に飾り、ポイント還元でもやれば客は自然に集まってくるはずと立案するのは考えが浅いと思います。『商売』というものをもう一度見つめ直す必要があるのではないでしょうか。

数千万円の資金を用意して工事を計画している所があるならば、少しだけ先延ばしして、数十万円の旅費を作ってこちらの商店に研修に来られてはいかがですか。


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